理事長「歳時記」2020年冬
2020 年 01 月 25 日
本来なら、寒の入りから節分までの期間は寒い季節です。しかしながら、年々雪も少なくなり厳しい冬の寒さではありません。地球温暖化が進むことにより、雪の影響、大雨、農作物が取れなくなるなどさまざまな心配が増えてきます。自然環境が損なわれると、風情までもなくなってしまいそうです。
俳句の世界では、冬の季語として「寒灸(かんきゅう、かんきう)」、「寒やいと」があります。江戸時代1820(文政3)年に、俳句の名人小林一茶も取り入れて詠んでいました。子供好きな一茶が、庶民の暮らしぶりをユーモアたっぷりに表現している句です。
〇風の子や裸で逃げる寒の灸
(かぜのこや はだかでにげる かんのきゅう)
お灸を嫌がって、裸で逃げ出すほどの元気な子供でも「おねしょ」の癖があるのを連想させてくれます。お灸は夜尿症のケアにも用いられ、昔はどこの家庭でも見られた習慣でした。通常、寒灸は体を温めて血行を促進させ春に向けて気力、体力を養う目的で使用されます。
この俳句から、懐かしい情景を短歌でも表現してみました。
〇学童の遠い昔の寒の灸元気印は病なしかな
(がくどうの とおいむかしの かんのきゅう げんきじるしは やまいなしかな)
2020(令和2)年 1月
一幡 良利