理事長「歳時記」2021年秋
2021 年 10 月 31 日
秋は柿の効用だけでなく、気候もよくなり病人が減るので「医者いらず」になるといわれていました。新型コロナウイルス感染症の発生から、2度目の秋を迎えて1日でも早くそんな時が来てもらいたいと誰もが望んでいます。
現在、新型コロナウイルス感染者は減少してきています。しかし、第6波が来るかもしれませんので、気を緩めるわけにはいきません。ワクチン接種を2回終えた人が全体で70%を超え、重症化しやすい65歳以上の高齢者の接種率も90%になりました。宿主側の因子としては、多くの人が免疫を獲得した良い状況です。ウイルス側の因子も変異による感染力の違い、実効再生産数などの要因がわかってきました。また、個人や事業所の感染対策の協力もかかせないものです。これら複合的な要因が感染を抑えています。
特効薬の飲み薬が認可されるまでは、いましばらく感染対策を忘れないようにしたいものです。
俳句の世界では「秋」と「灸」を取り入れた句は、他の季節に比べ多くはありません。
遠い昔に、詩人室生犀星が詠んだ句を紹介します。
〇秋も深く灸すえあふて別れけり
(あきもふかく きゅうすえあうて わかれけり)
これから迎える厳しい冬に備えるために灸を据えあって、親しい友人と別れを惜しんだものでした。当時は旅立に養生のため、灸を据えるのが日常でした。犀星53歳の頃、1942年(昭和17年)戦時体制の強化が進む頃でした。時代背景からはなぜかもの悲しい句です。
今日、対面で会えない友や親しい人とも、ようやく新しい生活様式を取り入れて、連絡を取りあうようになりました。そのような状況下で対峙する短歌を創作しました。
〇秋深く慣れ親しみてライン開けスマホ片手に笑みこぼれけり
(あきふかく なれしたしみて らいんあけ すまほかたてに えみこぼれけり)
2021(令和3)年10月
一幡 良利