理事長「歳時記」2023年春
2023 年 04 月 30 日
春の訪れが早くなりました。地球温暖化のせいでしょうか。桜(ソメイヨシノ)の開花も全国に先駆け東京では3月14日、満開が22日でした。平年の開花日(24日)にはもう満開となっていました。
札幌でも4月15日に開花、22日には満開(平年開花5月1日)となり、2週以上も早いのには驚かされました。
これからは、全国のソメイヨシノの開花・満開日の経験則は、地球温暖化が進むことによって通用しなくなるでしょう。
今年の二日灸(ふつかきゅう;旧暦2月2日に据える灸のこと)は2月21日でした。通常の暦では3月の初旬になるのですが、偶然とは言えこちらも少し早かったです。
俳句の世界では、無病息災や花見に因んだ「二日灸」が春の季語としてあります。
正岡子規(1867-1902) が明治26(1893)年に詠んだものを紹介します。
◎西行やわらじのまゝの二日灸
西行法師(1118-1190)は和歌を詠みながら旅をすることがライフワークで、俳句のような生活が似合っていたのでした。
西行自身は桜の美しい春、旧暦如月の満月の頃に死にたいものだと辞世の和歌を残していました。
「願わくば花の下にて春死なむその如月の望月の頃」
出家した彼にとっては、如月の望月(2月15日)は釈迦の命日で、特別な日でした。
これを詠った十数年後の2月16日に亡くなりました。
一方で、子規は春には花見に行くのが楽しみで、効能が倍になるという二日灸をして体力を整えていました。春には死にたくないものだと、二日灸を取り入れた句も多く詠んでいました。因みに子規の命日は9月19日でした。
子規は、新古今和歌集を徹底的に調べ上げ、俳句との表現の違いに触れていました。
上記二首から、写し出されるものが在るか、無いかが分かれば良いのですが・・・。
桜の花は早く咲いても楽しませてくれます。対峙する短歌を作ってみました。
◎おじぎして迎えてくれるさくら花 生命みなぎる春のひとこま
2023(令和5)年4月
一幡 良利(いちまん よしとし)