理事長「歳時記」2019年秋

2019 年 10 月 23 日

秋と言えば柿です。栄養価の高い柿の実は、美味であるばかりでなく漢方薬としても重宝されていました。柿が赤くなると医者は青くなるということわざがあります。柿には肺を潤し、咳を抑え、気道にたまった痰を取り除き、鎮咳などの働きがあるようです。

俳句の世界では、秋の季語として柿を題材とする優れた句が詠まれています。江戸期には、小林一茶も柿を取り入れた趣のある俳句を多く詠んでいました。1815年(文化12年)に詠んだ句のなかにも、「柿」と「お灸」を組み合わせたものがありました。鍼灸の世界としては興味深い一句です。

○渋い柿灸をすへて流しけり
(しぶいかき やいとをすえて ながしけり)

「渋い」味覚を灸施術で取り除こうとする描写が妙です。灸刺激により口腔内の唾液分泌量を増やし、渋味を一気に飲み込んで爽やかになったのでしょう。庶民派の一茶ならではのユーモアに富んだ俳句でした。

この俳句から、対峙する短歌を創作してみました。参考までに。

○渋い柿一口含みしかめ面灸を据へてえびす顔なる
(しぶいかき ひとくちふくみ しかめつら やいとをすえて えびすがおなる)

2019(令和元)年 10月
一幡 良利

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