理事長「歳時記」2020年夏
2020 年 07 月 31 日
今年の夏は不条理な現実に唖然としています。
少し明るい話題は、庭先から聞こえる季節外れのウグイスの鳴き声に癒されます。夏になっても、奥山に帰らず郊外に住みついているのです。移動しない個体が増えているのは、人が近くにいる方が安全なのでしょうか・・・。
そんな夏の日に想い出したのは、日野草城(ひの そうじょう)の俳句です。六十五年も前に詠まれた「ウグイス」と「お灸」を組み合わせた巧みなものでした。
〇巷なるうぐひすのこゑ灸にほふ
(ちまたなる うぐいすのこえ きゅうにおう)
声と匂い(香り)の表現が感覚器官を目覚めさせるのに面白いです。ウグイスの鳴き声に癒されて、対峙する短歌を創作してみました。参考までに、お灸で使う艾(もぐさ)は乾燥させた蓬(ヨモギ)の葉を精製したものです。
〇暗き世に五感研ぎ澄む明かりかな鶯の声蓬の香り
(くらきよに ごかんとぎすむ あかりかな うぐいすのこえ よもぎのかおり)
2020(令和2)年7月
一幡 良利