理事長「歳時記」2021年冬
2021 年 01 月 31 日
2021年になっても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、収束する気配も見られません。欧米ではCOVID-19ワクチンが開発され、昨年12月から人への接種がはじまりました。国内でも承認されれば、2月下旬から人への接種が順次計画されています。
俳句では、天然痘(疱瘡)や他の伝染性疾患に治療法のない時代、人々の神頼みの様子を詠ったものが多くありました。1899(明治32)年冬に正岡子規も詠んでいました。
〇赤幟疱瘡の神を送りけり
(あかのぼり ほうそうのかみを おくりけり)
疱瘡神(ほうそうがみ ほうそうしん)は、天然痘を擬神化した悪神で疫病神の1つです。
疫病神は赤色を苦手とするために、神社の鳥居や幟(のぼり)も赤色が多いようです。江戸時代、子供には赤い玩具・下着・置物が疱瘡神除けのお守りでした。今年は、牛年にあやかり赤べこが人気です。一方、お祈りすることで疱瘡を免れたり、軽減してくれたりする神でもあります。天然痘は一度経験すると再びかからないため、軽くすむように疱瘡神をまつり、治りかけたら神を送りだす風習もありました。対峙する情景を短歌で創作してみました。
○ワクチンや天然痘を送りだし次は脅威のコロナ送りかな
(わくちんや てんねんとうを おくりだし つぎはきょういの ころなおくりかな)
2021(令和3)年1月
一幡 良利