理事長「歳時記」2021年春
2021 年 04 月 30 日
春になっても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、収束する気配も見られません。
今年の桜の花見は、誰もいない場所で1人静かに観るだけでした。来年の春は、皆で今年の分まで満開の桜を楽しみましょう。
三度目の緊急事態宣言が4都府県には発出されています。ワクチン接種も順調に進んでいません。お願いばかりでは、感染症の切り札にはならないようです。厄介な変異株も出現していますが、水際でしっかりと止めるべき時です。苦難を乗り越えて、1日でも早く家族団らんを楽しむことができる生活に戻りたいものです。
俳句の世界では、正岡子規が詠んだ二日灸(ふつかきゅう)の季語を取り入れた多くの句がありました。氏は生涯、健康の維持・増進のためにお灸を据えていたことが良くわかるものでした。1893(明治26)年、26歳の頃に詠んだ一句。
〇婆々様の顔をしぞ思ふ二日灸
(ばばさまの かおをしぞおもう ふつかきゅう)
幼少期より正岡家では、二日灸を子供にも据える習慣がありました。施灸は婆々様(実際はひいおばあさん)にやってもらっていたのです。大人になって上京してからも、お灸をするときはいつでも婆々様の顔が思い浮かんでいました。このコロナ禍で離れて暮らす家族には、なかなか会えない今、なぜか郷愁を誘うものです。対峙する短歌を創作してみました。
○老医師の残せし書に刺激受け二日灸かとひとりおもえり
(ろういしの のこせしふみに しげきうけ ふつかきゅうかと ひとりおもえり)
2021(令和3)年4月
一幡 良利