理事長「歳時記」2024年冬

2024 年 01 月 30 日

能登地方は、昔から「能登はやさしや土までも」と言われている素朴な人情味であふれる土地柄です。

和倉温泉には「おもてなし日本一の旅館」があります。

その能登が、元日の夕刻、大地震に襲われ考えられない惨事となりました。

楽しい正月の語らいの場が一変してしまいました。

その後も余震は続いています。冬の寒さも厳しい能登では、避難所での生活にも難渋します。

亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様、その家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。

今年は辰年、12支の中で、唯一空想上での生き物です。陽の気が動いて、万物は活力旺盛になって大きく成長する年とも言われています。

しかし新年早々から大地を揺らさなくてはと、恨むばかりの年となりました。

住民の皆様が笑顔に戻り、元通りの生活を取り戻されるように心から願っております。

鍼灸の世界では、寒いこの時期に据えるお灸を寒灸(かんきゅう、かんやいと)と言います。

寒さで弱った体力を回復するために灸施術をしたものでした。

俳句の世界では、現代俳人の成瀬桜桃子(なるせ おうとうし 1925-2004)が「寒やいと」を季語に入れたものがありました。

1946年久保田万太郎に師事。作句は「祈り」の境地を多く詠んでいました。

難病で最後の手段として、お灸に託したものと思われます。「きゅう」でなく「やいと」の表現を用いたのが切ない響きがあります。

氏は関東在住でしたが、生まれは岐阜県でした。

◎寒やいと最後の綱とたのみけり

新型コロナウイルス感染症も季節性インフルエンザと同類に移行しました。一方で、まだウイルスの遺伝子変異は起きているので、暴れだす可能性はあります。

対峙する短歌を作ってみました。

◎雨晴れて心静かに頼みけり五類のコロナここにとどめし

2024(令和6)年1月

一幡 良利(いちまん よしとし)

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