理事長「歳時記」2019年春

2019 年 04 月 23 日

俳句の世界では、春の季語としてお灸を用いた言葉があります。「二日灸」(ふつかきゅう、ふつかやいと)です。旧暦の2月2日(今年は3月8日)にするお灸のことをさしています。この日にお灸をすると悪病災難に遭わずに、元気に過ごせるというものです。お灸の効果が倍増するとも言われていました。

「二日灸」を題材として詠んだ俳句の中にも、桜を愛でることの幸せを祈念したものがありました。詠み人は愛媛県松山出身の正岡子規です。誰でも知っている俳句の名人です。子規の句としてはあまり知られていませんが、鍼灸の世界としては興味深いものです。

○花に行く足に二日(ふつか)の灸(やいと)かな

冬の寒い2月2日にお灸をし、健やかに春を迎え花見に行くのを楽しみにした様子が伺えます。花見に行く頃は、足に二日灸の時に据えたお灸の痕(あと)が残っていたのでしょう。今日のお灸では痕が残ることはありません。昔の人は、はっきりと痕が残る大きなお灸をしていました。子規の出身地である松山は、とりわけ子どもの頃からお灸をする習慣があったようです。1888(明治21)年、21歳の頃に詠んだ作品でした。

この俳句の情景から、何処の経穴(つぼ)かを推測し、短歌を創作してみました。あくまで参考までに。

○灸(やいと)痕(あと)足の三里(さんり)に花模様裾(すそ)がはためき見えかくれたり

2019(平成31)年4月

一幡 良利

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