通巻132号 編集後記

2017 年 10 月 27 日

編集後記

☆ 「平成」に改まって29年目の新年を迎えました。昨年8月の天皇陛下のビデオメッセージを見たときから、陛下の退位時期はいつで、新たな「元号」はどういう形で公にされるのか? 今年は退位をめぐる議論がなされる年となります。日本では7世紀半ばに「大化」の元号が始めて使われ、天皇一代に一元号は「明治」から始まりました。1979年に制定された元号法は「皇位の継承があった場合に限り改める」と規定されていますので、退位が実現されれば変更されます。「平成」は元号法に基づき内閣が決めたもので、大化の改新以来247番目でした。元号は漢字2文字、書きやすく、読みやすい、過去に使われたものでないことが基準になっているようです。

  そういえば新年に初めて書き込みをする手帳の中には西暦のみで、「平成」の二文字が入っていないものがありました。新「元号」は新天皇即位の半年位から数カ月前に発表するとされているようです。出版業界では当分の間、気をもみ議論の行方を気にする酉年となるようです

☆ 1月20日内閣府の再就職等監視委員会は2013年から16年の文部科学省職員の再就職事例を調べ、違法事例10件、違法の疑い事例28件を公表しました。この違法例から文科省は事務次官ら7名を懲戒処分に、事務次官は早々に辞任しました。中間報告の2月21日には新たに17件、計27件の違法事例が追加されました。国家公務員法では「天下り規制」のために、現役職員が同僚やOBの再就職をあっせんすること、現役職員が在職中に補助金や許認可などで関係のある企業・団体に就職活動をすること、企業・団体に再就職したOBが離職後2年間、出身省庁に契約の口利きをすること、これら一切を禁じています。

  そもそも、官僚の天下りが行われる基盤にはキャリア官僚を中心に行われている早期勧奨退職慣行があります。国家公務員I種試験を経て幹部候補生として採用されたキャリア官僚は、程度の差こそあれ、同期入省者は横並びに昇進していきます。その過程で上位ポストに就くことができなかった者は職が与えられず、退職する以外に選択肢は無くなってしまうのです。事務方のトップである事務次官は1名ですので、なれなかったその他の同期キャリア官僚は総て退職することになります。この退職者たちは、省庁による斡旋を受け、それぞれ退職時の地位に応じた地位・待遇のポストに再就職します。一般にこの早期勧奨退職慣行が「天下り」と呼ばれているのです。

  そのためにいくら法整備をしようにも、自分たちの都合のよいように内部ではことが進められていたのが慣例となっているのです。3月末に最終結果が出る頃には、次なるうまい方策が考えられているでしょうか。

 ☆ 二日灸(ふつかきゅう)は旧暦2月2日に据える灸であることは周知の事実です。この日に灸を据えると効能が倍あり、病気をせず、災難をのがれ、長寿を保つとされています。俳句などの春の季語にもなっています。

  最近TBS系バラエティー番組「プレバト!!」(木曜午後7時)の俳句コーナーが注目を浴びています。芸能人の凡作を名作に変身させる俳人「夏井いつき」の添削がおもしろく、今や2ケタ視聴率を外さない人気になっているのです。俳句は「名人」が手を加えることで、特に助詞を変えるだけでもイメージが豹変します。これは日本語のもつ豊かな働きが生かされるからです。

  しかしながら、俳句の添削の名人もやはりこの人にはかないません。正岡子規です。「二日灸」を巧みな表現に変えた俳句を紹介します。 

河東 碧梧桐(かわひがし へきごとう)が詠った俳句。

 ◎「二日灸 和尚固より 灸の得手」

(ふつかきゅう おしょうもとより きゅうのえて)

  碧梧桐と高濱虚子は「子規門下の双璧」と謳われた人です。伝統的な五七五調を擁護する虚子とは対照的な人物でした。この一番弟子の俳句を師匠の子規は月並みな句として、今風にいえば添削をして、雅語(がご)を用いて最高の俳句に変身させています。 

◎「二日灸 和尚は灸の 上手なり」

(ふつかきゅう おしょうはきゅうの じょうずなり)

  昔は、和尚さんが仏教の修行とともに医療の知識や技術を持った僧医となり、薬草などを処方し、人々の苦しみを癒していました。この巧みな和尚さんに灸をしてもらうと、「二日灸」もより効能のあるものだ、ということをうまく表現しています。

(一幡 良利)

現在位置:ホーム > ブログ > 通巻132号 編集後記

このページの先頭へ